症例は30歳女性。心窩部痛を主訴に当院を受診。右下腹部に圧痛を認め、腹部造影CTで腫大した虫垂および肝被膜の濃染像を認めた。肝周囲の観察および整容性を考慮して単孔式腹腔鏡手術を施行した。蜂窩織性虫垂炎と肝周囲炎を認め、定型的に虫垂切除を行い、術中所見および術後の抗原・抗体検査からFitz-Hugh-Curtis 症候群(FHCS)の併発と診断した。FHCSは、女性生殖器から侵入したクラミジアにより骨盤内腹膜炎・肝周囲炎を呈する感染症で、性感染症の蔓延に伴って増加傾向にある。若年女性の急性腹症では本疾患も鑑別診断として考慮され、急性虫垂炎を伴った自験例において単孔式腹腔鏡手術は術中の肝周囲の観察と若年女性に対する整容性の面で有用であった。