本研究は、大学における美術教育が地域に対して担い得る造形活動の可能性と、望まれる学生への支援や指導方法のあり方について、実践に基づいて明らかにしようとするものである。本稿では、島根県出雲県土整備事務所依頼による遊具の配色計画を、島根大学教育学部美術教育専攻の授業において計画・立案し、施工業者の協力のもと学生が塗装をおこなう教育実践に基づいて、地域連携による教育プログラムのあり方を省察した。その結果、①参画する産官学が「学生教育の質」そのものを必要条件とする協働体であることの重要性、②それら協働体が学生自ら「他者性を獲得する」ための〈他者〉として機能することの必要性を指摘した。また、③可塑性を持ちながら提示する試案をもとに、事態を動かしながら問題を徐々に明らかにし、最終的な解答へ向かう状況論的プロセスによる教育方法に一定の知見を得た。