現在, 知的障がい特別支援学校では, 自閉スペクトラム症の児童生徒に対し, 主に環境調整を中心とした指導が行われている。本研究は, 自閉スペクトラム症の児童生徒の自立と社会参加を目指すためには, 環境調整の工夫に合わせ, 表出性コミュニケーション能力の育成が重要な指導内容であることを明らかにした。研究の方法としては, 知的障がい特別支援学校の児童2名に対し, 要求表出を中心としたコミュニケーション指導を行った。その結果, 獲得したコミュニケーション手段の自発的な使用や, 社会的相互作用の増加, 問題行動の減少等の変容が見られた。今後の課題としては, 表出性コミュニケーション能力の向上のための指導方法の追究や, コミュニケーション指導の取組状況の低さの要因を明らかにすることが挙げられる。