島根県では「ふるさと教育」が地域とのつながりの中で展開されている。ふるさと教育を充実したものとするために, 本研究では小学校中学年の道徳科でのふるさと教育をセルマンの視点取得理論を手がかりに構想・実践し, その効果を児童の「ふるさと」への「見方」や「考え方」の高まりに着目して明らかにする。道徳科の授業前と授業中,そして授業後の児童の記述内容の変化からは児童の視点取得段階が高まる姿が明らかとなり, 最終的には授業参加者全員の, 中学年で目指したい他者視点の獲得が判定された。視点取得段階が高まるにつれて, ふるさとである地域への見方や考え方が, 「地域のよさへの気づき」から「地域にこめられた昔の人の願い」, 「地域への愛着や誇り」, 「地域へ発信したり参画したりして地域に貢献しようとする意欲の獲得」へと高まっていくことが明らかとなった。