本研究では, 庵野秀明監督作品『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年10月~ 96年3 月)のサブタイトルにおける明朝体表現を対象として, 組版の再現実験をもとにタイポグラフィの特質とそのコンテクストについて考察した。その結果, 使用書体の選択について, 市川崑作品の影響下における写植書体の印象に類似したデジタルフォントを選択したと結論付けた。第二に, 組版における調整について, ①長体と平体の使用, ②読点位置の調整, ③ 4 種の異なる用法を使い分ける異サイズ混植, ④「マティスUB」による異ウエイト混植の実態を明らかにし, 調整の意図に言及した。第三に,市川崑作品の影響について, 各話を作り進めながら「対処的な調整」から「新味の表現」を模索し, 第拾六話あたりに独自のスタイルを定型化する経時変化を確認した。