中学校, 高等学校の外国語科において「コミュニケーション能力の育成」の必要性が叫ばれるようになって久しい。現在では, 多くの英語教員が日々の指導の改善を行い, 英文法の暗記を偏重していた従来の英語教育を脱却し, 言語活動を中心に据えた授業が広く展開されるようになってきている。他方では, 中等教育終了後, 大学に進学した学生の英語の文法力が低下しているという声も多く聞かれるようになってきている。しかし, 「言語活動を中心に据えた授業」が「いわゆる『文法力』を低下させている」と因果関係を推定することはあまりに拙速である。本稿では, (a) コミュニケーションを支える文法力とはどのようなものであるか, (b) そのような文法力を育成するためには具体的にどのような文法指導が有効であると考えられるか, という2点について論じる。その中で, VanPatten (1996) の示すProcessing Instruction (PI) という考え方に基づく文法指導が持つ可能性を示す。