島根大学法文学部
島根大学法文学部紀要. 文学科編

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島根大学法文学部紀要文学科編 11 巻 1 号
1988-12-25 発行

トマス・アクィナスにおける情念について

On the Passiones Animae According to Aquinas
本文ファイル
a003001101h005.pdf ( 1.93 MB )
内容記述
トマスは『神学大全』の第二部の第一部,第22問題から第48問題にわたって,魂の情念passiones animaeについてまとめて論述している。『神学大全』第二部は,人間の究極目的,至福について論じた後,至福に至るための人間の行為について論じている。すなわち,倫理的考察に充てられている。情念の考察は,だから,倫理学的考察の一部をなしている。さらに、『神学大全』第三部はイエス・キリストの救いの業を扱う。そことも情念論は関わっている。キリストは人間本性を採るからである。また第三部において,キリストの<passion>について、即ち受難について扱われる。それ故,トマスは,倫理学的かつ救済論的な関心から情念を考察していると言えるであろう。ここでは,聖トマスがなしている,情念についての基本的規定を,主に『神学大全』第二部の第一部,第22問題と,『真理論』第26問題,第1項から第3項までに従って見ておきたい。