近年, 求められる学びの変化の一つにSTEAM教育の推進が取り上げられている. 前回研究実践を行ったCMOSカメラを用いた天体の電視観望1では, 社会教育施設等における天体観望にまつわるいくつかの課題の解決を示したが, それも天体観望時の問題点をテクノロジーを活用することで解決するSTEAM教育の一環であったと解釈できる. 今回の研究実践は, 前回の観望時の問題に加え, 「どこにどんな天体があるか知らない」初心者でも, テクノロジーの力を借りて天体観望が可能になる方策を用い, CMOSカメラによる電子観望と併せて教材化を模索した研究実践報告である.プレートソルビング(Plate Solving) という技術は, 実際に天体が映り込んでいる写真を撮り, それをあらかじめ分かっている星図と比較することで, どの部分を撮影したかを特定するという技術である. この技術を観望機材に活かし, 容易に目的の天体を探しだせるようにした機材が発売されており, 比較的安価であるため学校等でも購入可能であろうと考える. それを学校に既にありそうなデジタル一眼レフカメラやカメラレンズ, 小さな望遠鏡を用いて動作させ, その設定や動作状況, 及び見え方等を報告するとともに, 中学生や小学生対象の観望会を実施しその様子を記す.
島根大学教育学部附属義務教育学校(後期課程) で中学生対象の観望会を計画した. 観望会自体は曇天のため観望はできなかったが, その中で, 天体観望よりテクノロジーの方に興味が強い生徒がいることが分かった. また, 大田市立北三瓶小学校が宿泊研修の際に実施した観望会で, 児童に機材を操作をしてもらい, どのような感想を得られたかも報告する. 天体観望という理科教育の天文分野をSTEAM教育と重ねようとした研究実践ではあるが, 容易に観望が可能になることが分かった. このような手法を用い, 今後, 同様の取り組みが各地で広がっていくことを期待したい.