Bulletin of the Faculty of Agriculture, Shimane University

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Bulletin of the Faculty of Agriculture, Shimane University 7
1973-12-15 発行

統計調査員の実態と問題点

The Actual State and Problems of the Local Enumerator
Hosono, Seiji
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 国勢調査,世界農林業センサスなど国の行なう各種の統計調査は,都道府県,市町村に委託されているが,直接に調査対象(調査客体,被調査者)に面接して調査を実施するのは市町村の統計調査員である.従って,統計調査員は統計機構の最末端,いわば第一線を担当する最も重要な要員である.昭和45年国勢調査においては,57万人,1970年世界農林業センサスにおいては,21万人,昭和47年商業統計調査においては,7万人にのほる統計調査員が任命されているが,同一人が二つ以上の調査の調査員を兼ねて任命されていることもあるから,調査員の実数を正確に把握することは困難である.現在,統計調査の実査は全くこのような調査員によって行なわれているから,調査の成績,精度は,ほとんどこの調査員の段階で決定されるといっても過言ではない.
 このように統計調査員は,統計調査機構において重要な役割をもっているが,最近,統計調査は多様化し,その種類は増加し,その内容はますます複雑になってきているので,多数の調査員を底辺とする地方,特に市町村統計組織の責任はますます重く,その負担も重くなってきている.しかし,現実には,調査員の負担する責任と労力に見合う報酬を支給することは困難であって,複雑な調査の実務は,調査員の奉仕精神と良心,プライドに依存しているのが現状である.また,このような状況においては,所定の調査員の獲得と確保はますます困難になりつつある.
 ここでは,調査員の本質について考察し,調査員の資格(望ましい条件)をあげ,つぎに,現実の調査員が,そのような資格条件をもっているかどうかについて,われわれが島根県内で行なった実態調査,および行政管理庁の行なった全国的な実態調査などの結果によって検討し,調査員のもつ問題点とあり方,調査員組織改善のための対策について述べたいと思う.そこで,はじめに,現在の統計学理論における調査組織論および調査員問題の取扱い方について,特に,マイヤー,ジージェック,フラスケンパー等のドイツ杜会統計学派および日本の統計学における所論を中心として,述べてみよう.
 ここで引用した統計調査員実態調査の結果は,昭和48年6月,7月に島根県松江市,東出雲町および大杜町において筆者の実施した調査を中心としている.ほかに,昭和48年4月実施した第24回全国統計大会事務局企画の島根県統計調査員実態調査および昭和46年11月行政管理庁実施の実態調査の結査からも引用した.
 この調査に対する島根県統計課,松江市役所,東出雲町,大杜町の町役場および統計調査員各位の御協力を感謝したい.