前報までに報告してきたように,発芽生長期に4一ヂオウリジン(以下4SUと記す)で処理されたダイコンめばえにおいては,子葉細胞内でのクロロプラストに固有なリボソームRNASの生合成が選択的に阻害される.したがってクロロプラスト内諸酵素および構造タンパク質の生成も抑制され,このことが4SU処理されたダイコン子葉での光照射に基づく縁化,すなわちクロロフィル色素生成の遅延をもたらしたという事が明らかにされた.この様なクロロプラスト固有のリボソームRNAS生成を阻害する例は他にクロラムフェニコール投与の際にも観察されているが,われわれの4SUの場合には光照射を続けることによってその阻害効果がしだいに消失し,4SU処理されたダイコン子葉の緑化も光照射4日目には正常体と同じレベルにまで回復するという特異的な性質がある.今回われわれは,4SU処理された子葉細胞内においてクロロプラストの明反応に関与する光合成系はいかに影響されたかを検討し,またそのクロロプラスト発生過程の形態学的考察を電子顕微鏡により行なったので,それらの結果をここに報告し,前報までに得られた結果と総合してクロロプラストの発生の問題について考察する.