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島根大学法文学部紀要文学科編 15 巻 1 号
1991-07-25 発行
助動詞「じ」について : 助動詞「ず」・「む」との関係を中心に
On the Ancient Particle Ji : In Comparison with Zu and Mu
吉田 茂晃
本文ファイル
a003001501h001.pdf
( 1.52 MB )
内容記述
次の二点を出発点として、 「じ」という助動詞について考えてみたい。
① 「じ」と「ず」とは、ともに”否定の助動詞”として、発生的にもおそらく何らかの関連がある。
② 「じ」と「む」とは、ともに”推量の助動詞”として、前者が後者の否定に相当するような関係にある。
以上の二点は、ともに広く認められてすでに定説であると言い得るのであるが、ただし、これらは別々に説かれるのが常であって、①と②の二点を二点ながら採り込んで助動詞「じ」の全体像を立体的に描き出したような議論は管見にはいらない。すなわち、 「じ」の語源が詮索される場面では①のみが問題とされ、 「じ」の意味・用法が論じられる場面では②に関心が集中して、しかも①的語源論と②的意味・用法論とは内面的な関連を論じられることもないままに単に並記されることが多かったのである。
けれども、一般に、一つの語における語源のあり方と意味・用法のあり方とは互いに無縁ではあり得ない。助動詞「じ」に関する議論においても、①的語源論と②的意味・用法論とは、言わば車の両輸であって、どちらの一をも欠くことはできない。今、「じ」について考察するにあたって、①と②の二点を、二点の組み合わされた全体として、議論の出発点に据えようとする所以である。
① 「じ」と「ず」とは、ともに”否定の助動詞”として、発生的にもおそらく何らかの関連がある。
② 「じ」と「む」とは、ともに”推量の助動詞”として、前者が後者の否定に相当するような関係にある。
以上の二点は、ともに広く認められてすでに定説であると言い得るのであるが、ただし、これらは別々に説かれるのが常であって、①と②の二点を二点ながら採り込んで助動詞「じ」の全体像を立体的に描き出したような議論は管見にはいらない。すなわち、 「じ」の語源が詮索される場面では①のみが問題とされ、 「じ」の意味・用法が論じられる場面では②に関心が集中して、しかも①的語源論と②的意味・用法論とは内面的な関連を論じられることもないままに単に並記されることが多かったのである。
けれども、一般に、一つの語における語源のあり方と意味・用法のあり方とは互いに無縁ではあり得ない。助動詞「じ」に関する議論においても、①的語源論と②的意味・用法論とは、言わば車の両輸であって、どちらの一をも欠くことはできない。今、「じ」について考察するにあたって、①と②の二点を、二点の組み合わされた全体として、議論の出発点に据えようとする所以である。
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