本研究では,若年男女を対象に体型認識や現実と理想体型との差から痩せ願望の性差を明らかにするとともに,運動習慣の有無と体型認識との関係について検討し,さらに,女性隠れ肥満者の体型認識や痩せ願望について検討した.対象は島根大学に所属する男子学生154名,女子286名の計440名であり,対象者に体組成測定とアンケート調査を行った.BMIをもとに男女それぞれを痩せ群(男子14名,女子47名),普通群(男子140名,女子239名)に分類し,また,女子普通群の中から,体脂肪率30.0%以上を基準として隠れ肥満者19名を抽出した.その結果,普通群および痩せ群の両群において自己体型評価に有意な性差がみられた(p<0.001).男子普通群では,実際のBMIと理想BMIに差はみられず,痩せ群の理想BMIは実際のBMIよりも有意に高く(p<0.05),正常範囲内にあることが認められた.一方,女子普通群では,理想BMIは正常範囲内であることが認められたが,実際のBMIよりも有意に低く(p<0.001),痩せ群では,理想BMIも痩せの範囲内であった.男女の痩せおよび普通群において運動習慣の有無別にみた理想BMIに差はみられなかった.隠れ肥満群とBMIをマッチングさせた対照群の比較では,両群間に自己体型評価の有意な差はみられず,実際のBMIと理想BMIについても有意な差はみられなかった.以上の結果より,若年女性は自己体型にかかわらず痩せを求める傾向があることが認められ,運動習慣の有無は男女ともに理想BMIに影響しないことが示唆された.また,隠れ肥満者は対照群よりも強い痩せ願望を持っているのではなく,生活習慣そのものに要因があると考えられた.