本稿においては、藤原為兼の作歌の経歴を年代を追うて考え、特にその作品を年代順に跡づけてみたい。それには彼の生涯を佐渡配流前、佐渡配流中、佐渡から帰京して土佐に配流されるまで、土佐配流以後の四期に分けて述べることにする。これは歌風の変遷による分け方というのではなく、二度の配流という大きな事件によつて便宜的に区分したのに過ぎない。本稿では彼の歌風を論ずるのを主目的としてはいない。それを考えるのにも必要な作歌の事実を年代順に見て行こうとするのである。そして本稿では歌の在り所・歌数・それに論述に必要な作品だけを掲げて、「年代順歌集」は載せない。