手形の実質関係の研究は、手形の理論構成の上からも叉手形の実際取引の実情を明かにする点からも極めて重要であり、手形法の今後の研究の重点はここに置かれるといわれている。
いわゆる利得償還請求の制度も、実質関係の一部をなす処の原因関係、資金関係を顧慮しないでは説明し得ない制度である。
利得償還請求権については、既に注目すべき一二の論文も公にせられ、叉数多くの判例を生んでいるが、学説未だ一に帰せず、叉判旨必ずしも肯認し難いものがあるので、本稿においては、一応この制度の全体に亘つて概説しながらそれ等の諸点に触れ、特にこの請求権の発生要件に関する若干の問題について考察する。