本稿に取り上げた子育て支援活動団体「いちごの会」は、障碍のある子どもとその保護者(家族) を支えることを目的に、1994年、島根県東部にある人口およそ3万人の町で誕生した。結成から四半世紀を経た今、そこでの取り組みや意義を、その時々の記録をもとに振り返りながら、この地で暮らす障碍のある子どもを養育する保護者を如何に支えたかについて検討した。
そこでの活動は、それまでの療育活動にあった障碍によって生ずる「できなさ」を改善していこうとする活動ではなく、障碍のある子どもとその保護者が主体的に「今」を生きてほしいことを願い、障碍のある子どもや人と一緒にいることを「楽しむ」場であった。また、新たに「おもちゃの家」事業や「医療・保健・福祉・教育総合相談会」「地域子育て支援会議」等の、子育て支援を受けるユーザーの立場に立った事業展開が図られた。ここにおいても、一人の子どもを真ん中において、関わり手である保護者やスタッフの双方が、共に生きるために重要な「互いに認めあうまなざし」を生成していった。
これらの「いちごの会」の活動について、「行ける場がある」「話したい人がいる」「学びの場がある」「子どもや家族、自分自身に対する発見の場になっている」といった評価が得られた。また、子育てに対する気持ちが楽になり前向きになるとともに、保護者にとって地域社会にむかう「勢い」が育まれていくことが示唆された。これらのことから、小さな町に興きた「いちごの会」における子育て支援活動は、障碍のある子どもを養育する保護者に「安らぎ」を与え、それをもとに「他者信頼」と「自己信頼(自信)」を育てるとともに、近い将来、必要となる地域社会に向き合う「勇気」を育てていったといえることができた。