(1) 大学生の住まいの伝統や文化に関する用語の認知度は、ハード面でもソフト面でも、近年の一般的な住宅や暮らしの中から姿を消しつつあるものの認知度が低かった。学習指導要領にある用語でも認知度が低いものもあり、教育のあり方を検討する必要があると考えられる。しかし、住まいの伝統や文化について、後世に伝えていくべき、学校現場で教えるべきと考えていた。
(2) 児童に伝統的和室の画像を呈示し、その空間を身近に感じるかどうか尋ねた結果、約3割の児童が身近に感じていない結果となった。しかし、居住している住宅に伝統的要素がある程、伝統的和室を身近に感じていた。
(3) SD法により、児童に『畳の部屋』のイメージを尋ねた結果、静か、すっきりしている、触り心地が良い等のイメージが得られた。一方で、歴史的建造物であり現代の生活に合っていない寄りのイメージが持たれており、畳の部屋に良いイメージを持っているものの、実際の生活において身近な空間ではなくなってきている様子が伺えた。これを因子分析にかけた結果、3つの因子が析出され、第1 因子を「価値」因子、第2 因子を「素材感」因子、第3因子を「伝統性」因子と命名した。
(4) 伝統的な住まいや建築に対して約65%の児童が興味を持っていた。自宅に床の間があったり、重要文化財住宅を見たことがある程、興味がある結果となった。
(5) 住まいの伝統や文化について学びたいと思っている児童は約8割であった。実感を伴った「住まいの伝統や文化」の教育には、単なる知識として終わらせない工夫が求められる。また、クロスカリキュラムによって小学校で日本の住生活文化に関する知識の基礎をつくり、中学校以降の学びにつなげることも可能となると考えられる。