島根大学教育学部紀要

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島根大学教育学部紀要 55
2022-02-17 発行

総合的な探究の時間を担う教員の育成体系の課題と展望 : 島根県教育委員会と島根大学の接続の視点から

The Issues and Perspectives of the Teacher Training System of Inquiry-Based Cross-Disciplinary Study : From the Perspective of Connecting the Shimane Prefectural Board of Education and Shimane University
中村 怜詞 島根大学大学院教育学研究科
ファイル
内容記述(抄録等)
総合的な学習の時間が導入されて以来、多くの教員が指導の難しさを指摘しており、総合的な探究の時間(以下総探)に探究的な学びを設計、実践し、カリキュラムマネジメントを進めていけるような教員の育成が課題であり続けている。本稿では、現場の教師が抱えている課題に関するインタビューデータを KH Corder を用いて共起ネットワーク分析を行い、教員の抱えている課題を整理した。その結果、課題としては赤堀の提唱する7つのスキルのうち、「デザインするスキル」「評価するスキル」「見通しを持つスキル」「内容とリンクするスキル」「協同で指導するスキル」「学習を援助するスキル」の6つのスキルについて現場の教員は課題を抱えていることが明らかになった。そして、島根大学と島根県教育委員会で実施されている講義や研修を、赤堀が提唱する「総合学習に取り組む教員が必要とする7 つのスキル」の視点を用いて整理することで、現在の養成段階から育成段階までどのような課題があるのか明らかにした。7つのスキルのうち「見通しを持つスキル」「協同で指導するスキル」はスキルの特性上、研修などで学ぶことが難しく、学習機会は設定されていなかった。また、2021年度から島根大学で「総合的な学習の時間」を学ぶことが必修化されたり、県で総探の担当者研修が実施されるなど、学習機会は徐々に整備されているものの、学習機会の多くは総探の担当者や希望者に限られていた。また、現場の教師の課題感として抽出された「カリキュラムマネジメント」や「校内体制の整備」に関するものなどは、総合的な探究の時間の中だけで完結できる範囲を超えており、管理職の支援やマネジメントにおいて、リーダーシップを発揮する管理職への支援と併せて考えていく必要性が見出された。最後に、これらを踏まえて、(1) 臨床的な学習機会を養成段階までに入れること、(2) 各学校現場での職場学習を推進するために学校のカリキュラム理解を促し、教員の組織文化を対話的に形成する機会を時間割の中に埋め込むなどして仕組み化すること、(3) 管理職に対するマネジメント研修と連携して探究学習推進担当者が研修などで学んだことを実践しやすい環境づくりを支援すること、の3点を提案した。