島根農科大学研究報告

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島根農科大学研究報告 15
1967-01-31 発行

林業労働力析出農家の分析

Economical Structure of the Forestry Worker's Household
中尾 鉱
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内容記述(抄録等)
周知のとおり林業労働カの給源は山村および農山村であって,その殆んどが半農的労働者として兼業農家層から析出されている.林業労働の就業形態が断続的であるなどの特殊性もあって,林業労働に関する統計資料がまだ充分整備されていないので,労働力人口を的確に把握することが困難であるが,自営業主と家族従業者を含めて全国でおよそ67万人,島根県で1.3万人ていどの林業労働者が存在するものと推定されている.
 1965年センサスは林業労働力の給源である山村および農山村のはげしい変容ぷりを報告している.かっては半失業人口のプール,過制就業のサンプルと言われた山村に,労働カ涸渇という,いまだかって見られなかった構造変化が生じたのである.農地改革以来はじめてと言われる変容のなかで,われわれは,国有林所在山村における林業労働力,林業労働力市場,労働力析出基盤などに関する諸問題の究明をとり上げた.
 われわれは主としてつぎの3分野から課題へのアプローチを試みた.
(イ)山村における農民層分解の視点から,兼業労働のなかにしめる林業労働力の位置づけの問題.
(ロ)育林労働と伐出労働,国有林労働など,林業の生産過程ないし労働カ需要市場などをとおしての,林業労働力の社会・経済的性格の究明.
(ハ)林業労働力の析出基盤である兼業農家の経済構造,とくに自営農林部門・兼業部門にわたる就業構造と産出・所得構造の分析.
 以上の分析を通じて林業経営と林業賃労働の近代化の方向をさぐろうと意図したものである.
 実態調査は島根県邑智郡大和村で実施した.大和村には3.4千haをこえる広大な国有林(川本営林署所管)と,170世帯にもおよぷ林業労働力析出世帯が存在する.
 大和村は自然地理的にも経済地理的にも「谷間の村」であって,林業労働・土木工事労働などを除いて,村内に適当な雇用市場が無く,また都市産業への通勤も不可能な地域であるため,広島・京阪神・名古屋方面へ年々多数の季節出稼ぎ労務者を送り出している.
 本稿は前記(ハ)の分野について,主として聴取調査表の諸データにもとづいて分析を試みたものである.