兌換銀行券と不換銀行券は、その擬制的貸付資本としての性質を異にし、その流通根拠ならびに流通法則を異にする。両形態の銀行券の擬制的貸付資本性の差別は、同時に、流通根拠における差別であり、そのような質的規定における差別から、両形態の銀行券の運動における差別が生ずる。その擬制的貸付資本性の差別と、貨幣代替物としての質的規定における差別は相照応する。けれども、それらがともに利子つき資本の運動の担い手として創出されるものであり、流通手段として機能しうるものである以上、二つの銀行券の流通根拠や流通法則には、一つの共通のものがみとめられなければならない。差別性の主張は同一性の認識とのたしかなつながりのもとで追求されなければならない。両形態の銀行券の擬制的貸付資本性、および、流通根拠をともに手形性にもとめたのでは、その本質と運動における差別はみうしなわれざるをえない。銀行券(兌換「銀行券」と不換「銀行券」)の同一性と差別性の問題は、その流通根拠における同一性と流通法則における差別性、または、擬制的貸付資本性における同一性と流通法則における差別性としてではなく、流通根拠においても、流通法則においても、擬制的貸付資本性においても、両形態の銀行券の同一性と差別性として、とらえられなければなるまい。このような視点から、紙券通貨一般との関連において、問題の考察を試みたい。