農地改革以後の農村をいかに把握するかという問題、即ち、農地改革によつて農村封建制の支柱であつた寄生地主制は一応崩壊したのであるが、山林原野の未解放および「一町歩保有地主」の残存をめぐつて、改革後の農村には依然として封建制が支配しており、そのような農村構造の中において、いわゆる「自作農民」の独立性が果して確保し得られるか否か、こうした問題をめぐつて「共同体」に関する種々なる論議が提起されるにいたつた。しかし「共同体」の本質については論者の間にいまなお見解の相違があり、まだ定説というべきものが形成されていない。それは当然のことといつてよい。何故なれば、この問題はただ単に農業経済学や経済史学の関心であるばかりでなく、社会学や歴史学等の問題でもあり、したがつてそれぞれの学問分野において、異った視点と関心内容とを有するからである。本論文の意図するところは、「共同休」に関する種々の見解の中から、代表的なものをとりあげて比較検討し、社会学における共同体の取上げ方「共同体に関する社会学的理論」の輪廓について、さゝやかなる私論を展開し、それに基いて、漁村共同体の本質を理論的に究明しようとするものである。