本研究は, 歴史的思考力の育成をめざした授業の開発・実践およびその評価方法の開発を行うことを目的とする。歴史的思考力については、特に「歴史を現代に転移させる力」(池尻・山内2012) に着目し, 生徒が現代的事象(イランの核開発問題) と歴史的事象(満州事変, 第2次国共合作, 太平洋戦争) の間において, 構造的な類似点を見出す授業を開発・実践した。これを, 研究実践校が作成したA高校ルーブリックと筆者が作成した歴史的思考力ルーブリックを用いて評価を行った。結果として, 約61%の生徒は歴史的事象を現代的事象に転移させることができていたことが明らかとなった。また, 転移の過程において協働的な学びが効果的に作用していることが示唆された。一方で, 歴史の転移についてその過程を明らかにすることが課題として挙がった。