2015 (平成27) 年, これまでの道徳の時間を「特別の教科 道徳」(以下「道徳科」と略記) と位置付けるための学習指導要領等の一部改正が行われ, 道徳教育の実質化及びその質的転換が求められた。全国的にも道徳教育への関心が高まり, 道徳教育の充実が喫緊の課題となる一方, 現場の教員の多くは道徳科の授業づくりに関して課題を抱えている現状がある。
本稿では, まず, 戦後提唱され広く実践されてきた道徳の時間の「基本過程」について批判的検討を行い, その意義と課題を明らかにした。次に, 道徳教育を通じて子どもたち一人一人が道徳的価値を自分ごととして考えることを目指して, 「自分ごと化」を定義づけ, その到達度を客観的に把握するための指標を作成した。最後に, 小学校における道徳科の授業実践とその検証を通じて, これまでの基本過程を再考し, 「だれもが」「平易に」しかも「効果的に」道徳科の授業に取り組むことができる「現代版基本過程」を提案した。