近年のエレクトロニクスを中心とする技術革新の進展は驚くべきものがあり,とりわけ半導体集積回路(LSI)の設計・製造技術の飛躍的進歩やソフトウェアの進歩は,その一つの顕著な例であろう。
こうした技術革新を背景にして,わが国の情報化は予想を超えた速度で進展をみせ,産業社会や国民生活に大きな変革をもたらしている。
急速な社会変革は,産業構造や生活形態のみならず,学校教育にも大きな影響を及ぼし,情報化社会に対応できる人材の育成は,今日の教育の基本的な課題の一つともいえる。
このような社会状況の中で,文部省は,「社会の変化に適切に対応する教育内容の在り方について」などの具体的な検討事項を挙げて,初等中等教育の教育内容を検討するため,昭和60年9月10日に教育課程審議会を発足させ,幼・小・中・高の教育課程の基準の改善について諮問した。
教育課程審議会は,昭和62年11月に審議の結果をまとめた「審議のまとめ」を公表し,同年12月24日に答申した。それによると,教育課程の基準改善のねらいの一つに,「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を重視すること」の必要性をあげ,そのためには,「科学技術の進歩や情報化の進展に対応するために必要な基礎的な能力の育成に留意しなければならない。」としている。
これらの改善の方針を受けて,中学校「技術・家庭科」では,新領域として,「情報基礎」が加えられる。
「情報基礎」の領域については,「コンピュータの操作を通して,コンピュータの役割と機能について理解させ,コンピュータを適切に利用する基礎的・基本的な能力を養うことができるよう,内容を構成する。」としている。
文部省では,この答申を受けて,学習指導要領の改訂作業を進めていたが,昭和63年7月26日に,「新学習指導要領素案」を発表した。今後の予定としては,63年12月末までに学習指導要領を公示し,新教育課程は移行措置の期間を経て,中学校は昭和68年度から全面実施する考えである。
新領域として設けられる「情報基礎」の指導内容では,①日常生活や産業の中で果たすコンピュータの役割,②ハードウェアの構成,③ソフトウェアの機能,④コンピュータの操作と処理,などが骨子になるとも言われている。
こうした動向の中で,この教科に携わる者にとって,新教育課程の実施への対応は大きな課題であり,例えば,領域における内容構成,題材や指導方法の開発など,山積している課題を解決していかねばならない。
本研究は,このような状況を踏まえながら,「情報基礎」の指導内容との関連で,パーソナルコンピュータによる図形処理を題材にして,コンピュータの操作に憤れることを主目的にした学習内容の構成と指導方法についての一つの試みをとりまとめたものの報告である。