先に著者らは脱リグニンによる木材の性質の変化,即ち,比重,膨張収縮,或いは強度の変化を測定して報告した。その結果,リグニンの細胞膜に対する接着力を定量的に求めたが,この実態を明らかにするためには,塩素化による脱リグニンの進行過程を一層明確に追跡する必要があるので本実験を試みた。問題は,脱リグニンの際に,リグニン以外の物質がいかに溶出されているかということと,脱リグニンが木材組織に対し均一に行はれるものでなく,むしろ試片の周辺より行はれるものと考えられ,その脱リグニン過程の進行方向や速度を明らかにすることである。