Laguna : 汽水域研究

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Laguna : 汽水域研究 5
1998-03 発行

コアSJ96の概要と宍道湖の古環境変遷

Holocene Environmental Change of a Coastal Lagoon, Shinji-ko, Southwest Japan, Based on the Analyses of the Core SJ 96
髙安 克已
出雲古代景観復元チーム イズモコダイケイカンフクゲンチーム
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内容記述(抄録等)
For clearing the Holocene environmental change, a core sample, SJ96, drilled in the coastal lagoon, Shinji-ko, southwest Japan, is examined by soft X-ray photo observation, and analysed for water content, Ioss of ignition, total nitrogen content, total organic carbon content and total sulphur content. The Holocene deposit of the core, Nakaumi Formation, is 14.83m in thickness and is divided into 5 units, I, II, III, IV and V in ascending order. The unit IV is divided into 3 subnunits, IV-L, IV-M and IV-U from the lower to the upper. The unit I and II show a brackish water environment with much terrigeneous material. The unit III has the highest saline environment in the core and some species of molluscs are present indicating a bay environment. The organic matter of planktonic origin is dominant, indicating high primary productivity. The unit IV, characterised by the occurrence of many juvenile shells of Potamocorbula sp., is a closed lagoon environment with rather low primary productivity. The K-Ah tephra (about 6300yr.B.P.) is intercalated in the lower part of the unit IV-L. The average ratio of sedimentation is smaller in the upper part of the K-Ah tephra than in the lower part of it. The unit V is deposited after the Hii River flowed directly into the Shinji-ko. The average sedimentation ratio of this unit is more than twice of the previous unit. Plenty of nutrients have been transported by Hii River, due to which the primary productivity in Shinji-ko becomes high and the organic matter of planktonic origin become predominant in the bottom sediments
これまでに宍道湖で行われた調査ボーリングのうち、完新統の基盤にまで達するコアで古環境復元を目的に分析されたものには、1960年代に工業技術院地質調査所が掘削したSB1とSB2、および1987年に建設省出雲工事事務所が掘削したBPIがある(図1)。SB1とSB2については水野ほか(1972)が層序学的な記載と対比について検討し、三梨・徳岡編(1988)の「中海・宍道湖 地形・底質・自然史アトラス」の中で、水野が肉眼的記載の詳細と間隙水の塩素イオン濃度の分析結果について公表している。また、大西(1977)、大西ほか(1990)は同じコアで花粉分析を、紺田・水野(1987)は有孔虫分析を行っている。最近ではSB1とBP1について中村・徳岡(1997)が喜界アカホヤ火山灰の産出層準を確認し、各コア間の対比を行っている。また、BP1については前本ほか(1989)が有孔虫分析を、大西ほか(1990)が花粉分析を行っている。
今回報告するコアは、島根県古代文化センターが古代出雲地方の自然景観復元に関する研究の一環として1996年に完新統の基盤まで掘削して採取したもので、同センターの客員研究員でもある高安がこれをもとに環境変遷について検討することになった。分析は島根大学汽水域研究センターの出雲古代景観復元チームが当たることになったが、貴重な資料であることに加えて資料数が多いため、古代文化センターの同意を得て、平成5~7年度文部省基盤研究A(1)「海跡湖堆積物からみた汽水域の環境変化ーその地域性と一般性ー」(代表;高安克己)のメンバーにも共同研究の一環として分析を分担してもらうことにした。いずれそれらの結果が出そろった段階で改めて古環境変遷について検討を行う予定であるが、ここでは、コアの肉眼および軟X線写真観察と古代出雲古環境復元チームがこれまでに行ったいくつかの分析結果について紹介し、今後、本コアを分析・検討していく上での資料としたい。
本コアについて、このような方法で分析を進めることに快諾して下さった島根県古代文化センターに深謝するしだいです。また、分析結果について貴重なご意見とご教示をいただいた島根大学総合理工学部三瓶良和博士と汽水域総研のメンバーの方々にも厚く御礼いたします。