(独)科学技術振興機構が行った平成20年度小学校理科教育実態調査では、若手小学校教員の6割以上が理科の指導に困難を感じており、理科に対する教員の苦手意識が浮き彫りになった。そこで、この傾向をさらに掘り下げて現状把握すべく、島根大学教育学部環境・理科教育推進室「環境寺子屋」に入塾している教員志望学生を対象に、理科の授業に対する意識調査を予察的に行った。対象の学生は、理科を含む自然科学に対する苦手意識を克服したいと考え、積極的に行動している教員志望学生である。調査の結果、彼らの多くが義務教育時代においては、理科について好印象を持っていた。一方で、現在、理科を教える自信がない学生が95%に達した。さらに、彼らはその理由を知識不足に起因するものであると結論づける傾向があることがわかった。しかし、実際には学生たちは自然科学に対する知識がないのではなく、すでに持っている知識を改めて見直し、補完・再構築する自発的な学習が重要であるという意識が、あまりない点が問題として浮かび上がった。また、理科に対して好意的な印象をもつ理由として、実験や観察など動きのある取組が理科にはあるからという学生が多く、これについては、より本質的な「理解する楽しみ」をもてる実験・観察・実習の指導のあり方を、学生自らが体験学修を通じて実感する必要があることが分かった。