本研究は、スポーツでの達成を阻害すると考えられるセルフ・ハンディキャッピング(self-handicapping: SH)に着目し、スポーツにおけるSHを測定する尺度を作成するとともに、SHに影響する要因として目標志向性とチームの動機づけ構造を取り上げ、SH方略の使用との関連を明らかにすることを目的として行われた。
島根県及び岡山県の3つの公立高校の運動部に所属する生徒286名(男子185名、女子101名)を対象に、(1)スポーツにおけるSH方略、(2)目標志向性、および(3)チームの動機づけ構造を測定する質問紙調査を実施した。
まず、因子分析の結果、スポーツにおけるSHとして、集中力の欠如、合理化、準備性、気持ちの不安定、不安の訴え、妨害の訴え、不適切な目標の選択の7因子が抽出された。次に、重回帰分析の結果、熟達目標を持つ選手ほどSH方略を使用しない傾向があるのに対して、成績目標を持つ選手はSH方略を使用しやすい傾向にあることが認められた。また、チームの動機づけ構造との関連では、コーチがチームに所属する選手を能力の高さのみで評価すると認知する選手はSH方略を使用しやすい傾向にあることが示唆された。
以上のことから、スポーツ場面におけるSH方略の使用の抑制には、選手に熟達目標を持たせるとともに、指導者が選手を能力のみで評価・判断しない指導の重要性が示唆された。