本研究は「異化の詩教育学」という仮説的な理論の継続研究である。本稿では、前稿「教材編成の理論と方法」(『島根大学教育学部紀要』第34巻)で提示した教材類型の中で、「ことば型」の詩を教材化したときの授業モデル(受容指導)について考察する。ことば型の詩とは、「ことば」を対象として異化の現象を作り出す作品であり、「ことばあそびの詩」はその代表的なジャンルである。
「ことばあそびの詩」はこれまで、ネーミングもあって「あそびの詩」とみなされ、詩として軽く扱われることが多かった。そのために、その教材価値の発掘と、その指導法の開発も十分ではなかった。しかし、「ことばあそびの詩」は、ことばを対象とした異化作用のきわめて強いジャンルであり、他のジャンルの詩にはみられない、詩教育としての独自の教育内容があると私は考えている。そこで、本稿では、「ことばあそびの詩」のすぐれた実践を通して、「ことば」型の詩の教材としての魅力とその授業モデルについて考察する。