筆者は,山陰における陸水エビ類の分類学的ならびに分布学的研究の一部として,さきに(1951),石見と出雲における研究を本論集第1号(P.71~82)によつて公表し,陸水エビ類として,ヌマエビ科の Paratya compressa, Neocaridina denticulata, Caridina leucostica, C. japonica, C. serratirostris koterai の5種と,テナガエビ科の Leander paucidens, L. japonicus, Palaemon longipes, Pal. nipponensis の4種を扱つた。これらのうち,C. serrairostris koterai は,当時1新亜種として筆者が初めて記載したものである。
本文においては,主として,その後にいたつて筆者が採集調査せる事実ならびに考究せる分布上の所見を述べて,石見と出雲における陸水エビ類のファウナや分布論の正鵠を期せんとするものであり,あわせて,今回は島根におけるそれら利用の一般について筆を加える。