筆者は最近核磁気及び強磁性共鳴吸収の研究に使用するための電磁石を製作した。勿論周到な設計と充分な費用の下に作られたのでわなく,手軽に入る材料を用い,之に出来るだけ必要な加工を施した程度の飽くまで現実的なものである。然し後に述べる通り最初予想したよりも優秀な性能を有することが分つたので茲に報告する次第である。磁場の測定に関しては従来余り精密な方法が無かつたのであるが,1946年 F. Bloch 並びに E. M. Purcell(共に1952年度ノーベル物理学賞受賞者)等に依て始められた核スピン反転による液体や固体のラジオ電波吸収,所謂原子核磁気共鳴吸収の方法に依つて非常に精密に測走することが可能になつた。これは全く新しい劃期的な発見である。この結果原子核の諸性質のみならす物性論の諸分野に於て驚くべき程重要な成果が拳げらて来た。
筆者は水やパラフィンによる陽子共鳴吸収を利用して上記電磁石の磁場を測定し従来の方法によるものと比較した。