前稿において,筆者は若槻喜保とともに,島根県における精神薄弱児特殊学級の実態調査を行ない,特殊学級の概況,入級判別と児童生徒の実態,担任教師の実態,学校における特殊学級の位置,学級経営の実態について結果を報告し,問題点を指摘した。そこには,島根のみならず全国的に今日の特殊学級が直面している問題状況が現われており,より詳細な現状の分析と理論的解明の必要性が痛感された。
そこで本稿では,先の調査でもあきらかになり,全国的にも最近とくに顕著になってきている精神薄弱児特殊学級の促進学級化傾向をとりあげたい。ただしここでは,促進学級や促進教育の是非を論ずるわけではない。ほんらい精神薄弱児を対象としているはずの特殊学級が,なぜ急激に促進学級化してきたのか,特殊学級とはほんらいどういう性格の学級であるべきなのか,このような傾向を克服していくにはなにが必要なのか,そういう課題が本稿の中心である。そこでまず,精神薄弱児特殊学級のもつ性格を間いなおすことから論をすすめたい。