我々は現在,深刻な環境問題の危機に直面しており,我が国においても環境教育の充実が極めて重要な課題となっている。今日の環境問題は,対症療法的対策で解決できるものではなく,その根本的解決に向けた環境教育が求められている。根本的な解決をめざす環境教育とは,「Think Glovally,Act Locally」(地球的規模で考え,足元から行動する)と表現されるように,環境問題とは何かの構図等を理解するだけでなく,日常の暮らしのレベルで環境負荷を少なくするための種々の行動がとれることを目標にしたものである1)2)3)4)5)。したがって,環境教育は児童・生徒の行動の基盤となる価値観や倫理観を問うものでなければならない6)。
さらに,このような問題状況に対応できる環境教育は,人と環境とが共生できる社会の形成者として,自らの生活を見直すというアプローチを通し,生活者としての意識や価値観の変革と環境に責任を持てる新たなライフスタイルの確立を志向するものである7)。これは,今日強く求められている生きる力を育成することにもつながるといえる8)。したがって,身近な日常生活のあり方を多様な視点から問い直す家庭科と環境教育とは,関わりが深いだけでなく,環境教育は家庭科を通して統合されるともいえる。
環境教育は学校現場において,ようやく定着してきているが,教科間あるいは同一の教科内においても個別に実施されている場合が多く,体系化されるに至っていない。我々は,これまで家庭科における環境教育の体系化をめざし,種々の学校段階での水環境を主題とした環境教育を実践し,その意義や学習効果などを検証してきている9)10)11)12)。さらに,今回は中学校段階で水環境保全に焦点を当て,地域社会の一員として暮らしを問い直すという視点から授業研究を行ったので,結果を報告する。