以前の研究(Fukada,1984)で,恐怖喚起コミュニケーションの説得効果に及ぼす方法論上の諸要因の影響を検討した。そこでは,従来の恐怖喚起コミュニケーション研究で使用されてきた説得話題,媒体,被験者,および説得効果の測度のそれぞれと説得効果との間の関係を分析したが,資料を提供するにとどまった。本稿では,そうした方法論上の諸要因が説得効果に及ぼす影響に関して,Fukada(1984)を一歩前進させ,問題点の指摘にとどまらず,将来の研究に対する方法論上の留意点を提言したい。
Fukada(1984)と比較した本研究の特徴は次の通りである。(1)方法論上の問題点の指摘だけでなく,採用すべき方法の指針を提出した。(2)分析対象とする過去の研究の中に筆者の研究を合めると,トートロジー的誤りを犯すことになるので,筆者の研究のうち最も初期のもの(深田,1973)のみを残し,それ以後の研究は分析対象から削除した。(3)恐怖喚起情報の成分別効果を検討した研究を,新たに分析対象に加えた。(4)過去の研究における恐怖操作の成否について吟味し,方法論上の要因と説得効果との間の関係を分析する前提条件が満たされているかどうかを確認した。(5)分析結果や記述についての若干の誤りを訂正した。