現在,牧野入会権の慣習をみると,そこには今まで原型prototypeと思われていた入会のものから,しだいに変質,変化して解体したと思われるものまで,その間に,非常に多種多様の中間タイプが存在している。これは,最近の牧野や森林の法社会学的諸調査が,精力的に行なわれた結果わかってきたところである。そこでこれを整理,類型化して認識を容易にし,ある共同の牧野利用が,果して入会権によるものであるか,それとも,その他の権原によるものであるか,または始めは入会利用であったものが,しだいに解体し,全く入会権以外のものに移行したものであるか,等を見きわめる手段にしたいと思うのである。
もし入会権によるものだとしても,いかなる形態に属する慣習のものであるか,慣習のタイプを知ろうとするのがこの研究の目的である。
慣習そのものが入会権の内容と形式を示すものだとされる以上,入会権のタイプは,入会の慣習のタイプということになる。もちろん各地の慣習は,それぞれ,それ相応に違うものである。だからこそ,それぞれに共通するある範疇壽条件のもとに類型化し,複雑な入会関係の認識を的確にするとともに,入会問題解決の一つの鍵にしたいわけである。つまり,ある原型と思われる型を既成概念として,それにはずれるものは入会権でないとするような誤りをなくしたいのである。慣習を基にして,多様な入会型のあることを主張したいのである。
この類型化の方向は,大体において,一類型化の中で,従来,原型と思われている集団利用の古い形態のものから,漸次,新しい解体的個人主義的,個別利用形態のものへと分類してみたのである(なかには,そのようになっていないところもある)。