島根大学論集. 自然科学

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島根大学論集. 自然科学 4
1954-03-31 発行

中海に於ける観測(第二報) : 海況悪変に関する水質方面からの考察

Studies on the Change of the Lake Water Properties in the Nakanoumi(II)
酒井 勝郎
曾我 治
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内容記述(抄録等)
中海は淡水と塩水とが交雑する半塩湖である。従来,水産養殖関係の人達の要求によつて,種々の調査が行はれてゐる。
 これらは水産試験場等で,実施せられたものである為,その立場上応用方面からのデータ蒐集に主力が注がれ,湖沼学的見地から,海況の変化を追求して行くのには,不足の感がある。筆者等は,中海海況悪変による養殖性蠣大量斃死の報告を見,島根県水産試験場の依嘱により,調査を行ひ,純学術的立場から,この湖の性格を究明することを思ひたち,昭和24年以来この問題に心を砕き,しばしば報告をしてゐるが,まだその望を達せず,今尚この研究の全貌を如何に展間すべきかの点に,考察を繰返すのみである。今回も未だ中間報告であるが,昭和28年度測定結果と,その結果からの考察を,ここにのべることにする。
 筆者等は湖沼学的追求を志すとはいへ,そのような本格的な調査は,実際には手がつけられないので,先づ水産関係の試験と同様なデータをとつた上で,考察を応用的ではなく,湖沼学的に進める事にした。そこで問題にしたのは,中海の海況悪変である。従来から知られてゐるように,中海に於て,8月から10月にかけて,養殖貝類斃死の現象が起り,この時期に海況悪変が起るつてゐる。筆者等はここ数年の調査により,この悪変が,夏期から秋期にかけて起る酸素欠亡,還元的性質形成に基くものと推定して次に報告するような事項を検討した。