島根大学論集. 自然科学

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島根大学論集. 自然科学 2
1952-03-31 発行

島根地方に於ける竹と笹

内田 繁太郎
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内容記述(抄録等)
 竹と笹との区別に就ては色々説明されているが,ここでは竹の皮が発生後間もなく落ちるものを竹と呼び,然らざるものを笹と呼ぶことにする。竹笹を合せて竹類というのであるが,さて竹類というと旧分類法に從えば禾本科(Grammineae)に入るべきであるが,解剖上からも花の構造上からも禾本科から分けた方がよいので、我國に於ても1933年中井猛之進博士が竹科(Bambusaceae Link,1833)の復活独立を主張してから,以來竹科植物として表わされるようになった。
 我國に於ける竹類の種類は昭和の初め頃までは僅々7.80種と称えられていたが,其後急に竹類の研究が進み続々とその新種も発見され今では変種異種合せて700余種に達しておる。
 さて島根地方にはどれ位竹類の種類があるであろうか? 島根地方の竹類に就ては大正の末期から昭和にかけて丸山巖氏,岸野頼三郎氏及び林実,高木仟両氏等によりて採集せられ小泉源一博士によって命名発表されたものが数種あるが
  Sasa iwamiana Koidz. エダウチコザサ (丸山氏発見,1937)
  S. Maruyamana Koidz. ナガバザサ(  〃    )
  S.ramosisma Koidz.コバノネマガリザサ(  〃    )
  Sasaella cappattama Koidz.カツバシノ(  〃    )
  S.auriculata Koidz.オタフクシノ(  〃    )
  S.Kishinoana Koidz.イハミシノ(岸野氏発見,1934)
その総種類に就ては未だ之を明かにされたものはないようであるので,余輩乏しきを顧みず敢て之を就さんと試み,先ず予備調査として次記の如く野生栽植のものを通じ変種異種を含めて從來知られたもの25種,耳新しいと思わるるもの42種合計67種を茲に発表することにした。更に未調査のもの並に新種と思われるものもあるが,これらは後日研究を経て発表する考えである。早急稿をまとめたので不備の点も免れぬと思うがこれは後日修補訂正することにする。なお本稿を草するに当り兵庫縣高等学校教諭室井綽君には標品の同定を乞い叉松江高等学校教諭丸山巖君には所藏の標品の借覧を許され且つ種々注意と便宜を受けたことを茲に深く感謝する次第である。