島根大学論集. 自然科学

ダウンロード数 : ?
島根大学論集. 自然科学 2
1952-03-31 発行

大根葉中のビタミンCに就いて研究(第一報)

竹吉 正規
ファイル
内容記述(抄録等)
 我島根縣下に於ける大根栽培状況を昭和24年度島根縣統計書に就て見るに昭和23年度に於ける作付面積は1.138町歩に及びその収量は5,727,816貫に及ぶ,更に昭和19年より同22年迄の作付面積を見るに,何れも1千町歩以上にして23年度のそれと比較して大なる増減を見ず叉その収量に於ても同様である。之を本縣下に於て栽培する20数種の蔬菜の総作付面積4,300町歩から見る時大根の作付面積は実にその4分の1を占め本縣下に於ては最も重要な蔬菜である。
 大根葉中にはビタミンA,B,Cを可なり豊富に含有して居る事は藤田其他多数の報告があり叉葉は菜類中最も栄養価高く,代替食としての価値につき既に田所の白鼠に就ての実験報告がある。
 然るに島根縣下に於て食用とする処は專ら大根に限られ葉は殆ど放棄せられて顧みられない状態にあるが然し葉中にはビクミンA,B,Cを豊富に含有し且つ葉中の蛋白質ぱその質が良好である等の点から観て食品としては寧ろ大根に優って居るにもかかわらず,その葉は今尚殆ど未利用の状態に置かれて居る。
 そこでこの利用法の1つとして筆者は,葉中のビタミン特にその内最も不安定なビタミンCの保存法に就て主として研究した。
 元來我國の一般家庭にあってはビタミンCの給源は主として蔬菜類に之を仰いでいるが冬季は新鮮な蔬菜に不足し易く,そのため自らビタミンCの欠乏を來し易い惧がある,殊にこの傾向は都市に大きく中崎の研究によれば都市居佳者は農村居佳者の約2倍の潜在性ビタミンC欠乏者があると緒論している。從ってごの問題は我國民の保健上憂慮すべき問題であり,筆者はこの問題の解決策の1つとしてなるべく安価にビタミンCを大量に得んとしてこの研究に着手した次第である。