島根大学論集. 人文科学

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島根大学論集. 人文科学 9
1959-02-28 発行

レッシングのPanentheismus

早川 昭
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内容記述(抄録等)
「人間の教育」第七十三節に於て、窮極的に把握されたレツシングの神の概念は、ここに到るまでに、幾多の曲折を経て来てゐる。啓蒙主義の嫡子として、そこから出発した彼は、その合理主義的制約をついに脱け出し得なかつたものの、認識手段としての理性をその限界にまで追ひつめることによつて、言はば、啓蒙的合理主義の限界をその内部からきはめ、その自已破壊を促したものと言へよう。彼の神の把握も亦、このやうにして啓蒙主義一般の山麓から、その絶巓への過程を辿るのであるが、ただ、この過程に於て彼は絶えず幾つかのアポリアに突きあたり、その克服に腐心せねばならなかつた。そして、彼をして同時代の合理主義の神観に飽き足らせず、このアポリアに彼を追ひ込み、同時にそれを解決せしめたものは、彼の個性的な宗致性Religiositat ゲーテの言ふWeltfrommigkeit だつたといつてよいだらう。彼自身の言葉を裏書きするやうに、彼の神の把握は、その固定的な最終の姿に於てよりも、むしろ、そこに到る精神過程に於て、より興味をそそるものを持っている。