島根大学法文学部紀要. 文学科編

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島根大学法文学部紀要. 文学科編 3 2
1980-12-25 発行

ウォーの The Loved One について

Waugh's the Loved One
鈴木 繁一
ファイル
a003000302h009.pdf 1.03 MB ( 限定公開 )
内容記述(抄録等)
Evelyn Waughの小説作品の背景を知りたいと思う読者にとって,Gene D.phillips,Evelyn Waugh's Officers,Gentleman,and Rogues:The Fact Behind His Fiction(1975)やChristopher Sykes,Evelyn Waugh:A Biography(1975)は重宝な書物である。これらに続いてウォーの日記The Diaried of Evelyn Waugh(1976)と,エッセイ集A Little Order:A Selection From His Journalism(1977)が出版され,読者はウォーの手になる,作品以外の一次資料に接することが容易になった。
The Loved One(1948)は,わが国では翻訳あり注釈あり,大学の授業でも使われよく親しまれている。この作品の着想は,よく知られているように,作者がハリウッドのMGM社に招かれたおりに,一大企業である霊園Forest Lawn Memorial Parkを見聞して得られた。アメリカ風俗の戯画やイギリス詩のもじりなど,この作者の手になるというだけで期待を抱かせる要素が豊富である。しかし私には,The Loved Oneは内容も評価も疑問の多い作品である。幸い上記資料中にこの作品に関するものが若干ある。資料と作品の関連はフィリップスやサイクスの書物で多くが論じられているが,私の気づく問題点を以下に述べ,この作品に対する私の態度を明らかにしておきたい。