島根大学法文学部紀要. 文学科編

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島根大学法文学部紀要. 文学科編 14 1
1990-12-25 発行

七尋女房 : 山陰の妖怪考(1)

Nanahiro-Nyobo
酒井 董美
ファイル
a003001401h002.pdf 10.7 MB ( 限定公開 )
内容記述(抄録等)
 山陰地方の一角に「七尋女房」と称する妖怪の民間説話(以下、「民話」と略称する)が伝えられている。呼び方はナナフロニョバというのが一般的であるが、これ以外にもナナヒロニョバ、ナナヒロオンナ、あるいはナナタケオンナ(七丈女)などとも言われている。いずれも同類の妖怪をいうのであり、ここでは最も広く用いられている七尋女房の語で代表させて話を進めることとする。
 さて、この妖怪は一口に言うならばまず女性であって、七尋(一尋を約一・六メートルとすれば、だいたい十一メートルあまりになる)の背丈を持っているところにその特徴がある。これはある地方では伝説として、また他の地方では世間話の形で認められるようである。まず島根県の分布を見てみると、出雲地方では松江市馬潟町、安来市門生町、能義郡伯太町、八束郡島根町に。隠岐地方では中ノ島、っまり海士町の一部にこれまでその報告例が見られる。一方鳥取県では、東伯郡赤碕町梅田と日野郡江府町宮市に伝えられている模様である。しかし、筆者の知る限りではこれまでのところ、それ以外の地方で同類に関する話はなぜか聞かれないのである。
本稿ではこの妖怪の正体を、民俗学の立場から考察してみることとする。