島根大学法文学部紀要. 文学科編

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島根大学法文学部紀要. 文学科編 14 1
1990-12-25 発行

島根の自殺 : 過疎問題の一断面

Suicide in Shimane : A Phase of Depopulation
山本 努
ファイル
a003001401h009.pdf 3 MB ( 限定公開 )
内容記述(抄録等)
 過疎県島根の自殺統計を,昭和40年から昭和60年までの約20年にわたって分析して,次のことが判明した。まず,地域的には,県内で最も過疎化の進行した県西部山村地帯(石見地方郡部)で著しい自殺の集積化が見られた。これは,高度成長末期の昭和45年頃から明白な傾向となったが,過疎地の人口減が,一応頭打ちになった昭和50年,55年以降から,さらに顕著な傾向となり,昭和60年現在さらに進行中である。過疎問題の研究は,社会学では最近はあまり注目されないが,今日でも大きな問題なのである。ついで,島根県では職業的には,職業「不詳」層の自殺率が高まる傾向が見られた。職業階層で見ると,下層への自殺のセグリゲーションが増大したのである。また,年齢的には,高齢者の自殺が地域の過疎化と特に,強い相関関係があることが判明した。以上を総括すれば,近年,地域的にも職業的にも社会的弱者の部分への自殺のセグリゲーションが,より進んでいることが分かる。「自殺は,社会の気分のありかたを表現している」とは,デュルケーム『自殺論』の言明である。ここから考えれば,日本の社会は,弱者に厳しい社会になりつつあると,一応,現状分析できる。