島根大学法文学部紀要. 文学科編

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島根大学法文学部紀要. 文学科編 14 1
1990-12-25 発行

乳児の事物操作行動に関する縦断的研究 : 機能的適切さ再考

A Longitudinal Study on Manipulation of Objects in an Infant : Reconsideratin of Functional Appropriateness
ファイル
a003001401h007.pdf 1.66 MB ( 限定公開 )
内容記述(抄録等)
 乳児の身の回りには,様々な事物が存在するが,乳児は,それをどのように認識しているのだろうか。スプーンを持った乳児が机をバンバンと叩いて,スプーンを取り上げられるということはよくみられる光景であるが,やがて,茶碗からすくって口に持っていこうとするようになる。ここにおいて、大人は,この乳児はスプーンを「スプーン」としてとらえるようになったのだと判断している。このような現象は,どのように考えることができるだろうか。
 園原は,我々が事物を知覚するとき,その事物を自分との関係の中でとらえており,それがその事物の意味を構成していると考えている。そして,乳児にとっては,事物はつかむもの,いじるもの,口に入れるものという意味で対象であり,そういう意味の対象として形象的な区別がなされていると考えている(園原 1962.1972)。
 また,谷村(1978)は,Piagetのシェマという概念を紹介する中で,シェマとは一定の感覚映像と運動とが主体の内部に形作る一つの円環的なまとまりであるとし,行動的な意味単位とみなしうるとしている。そして,つかむシェマや振るシェマに事物を同化するのは,それをつかむもの,振るものと意味づけていると考えられるとしている。
 本稿では,これらの考えを参考に,乳児の事物操作行動を,乳児のその事物に対する意味づけという観点から考えて,事物操作行動の発達過程を検討することによって,乳児にとっての事物の意味を考察する。