Decline and FallとBrideshead Revisitedそれぞれの初版には,‘Author’s Note’そして‘Warning’(ジャケットに印刷)と題する作者の短い一文がついている。作者はそれらにおいて,Decline and Fallについては,「この作品は滑稽を意図されているということを,どうかいつも忘れないでいただきたい」と書き,Brideshead Revisitedについては,このことばを引きあいに出しながら「『ブライズヘッド再訪』は滑稽を意図されていない」と言わねばならないと述べている。確かに前者は,続くVile Bodies,Black Mischiefと同じく笑劇的・戯画的作風の作品であったのに,後者は,ウォーがはっきりとカトリックの立場から書いた‘fierce little human tragedy’であり,この作品における作者の変貌は人々を大いに驚かせたのであった。このように,Decline and FallとBrideshead Revisitedを並べると,二つは全く異なった作品であるという見方がまずなされるであろう。しかしながら,ウォーのすべての小説作品を視野に入れて考えると,Decline and Fallは,荒唐無稽なまでに笑劇的になることがあるにもかかわらず,現代イギリス人の運命や生き方をテーマとしたBrideshead Revisited,Sword of Honourへと続く線上にあると見ることができる。本稿の主要な論点はここにある。