経済科学論集

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経済科学論集 19
1993-02-25 発行

過疎地域における人口流出の要因と流出構造 : 統計的研究と事例研究

The Structure and Socio-economic Factors of Population Outflow in Depopulated Area
藤岡 光夫
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内容記述(抄録等)
1980年代における日本の産業構造の急激な変化の中で,いわゆる経済のサービス化,ソフト化がもたらされるとともに,経済の国際化が急速にすすんできた。また,コンピュータと通信の結合による技術進歩を背景に生産分野から事務,販売,金融,流通,サービス等さまざまな分野に情報化の波が広がっていった。このような経済の大きな変動は,産業別や職業別にみた就業構造にも顕著な変化をもたらすことになった。さらに,就業者の構成変化は,労働力の階層間移動を活発化させていった。しかし,全国的にみた就業構造の変化や労働力の階層間移動の活発化は,地域的に一様に進行するのではなく,著しい地域格差をもってあらわれることになる。すなわち,企業の中枢部門,先端産業部門,対事業所サービス業や金融部門などの東京一極集中が進行し,東京圏が人口・労働力の大きな吸引力をもつことになってきたのである。これに対して,大阪経済圏は相対的に吸引力を低下させてきた。
 一方,地方圏では,1970年代後半以降一時人口・労働力の減少傾向が鈍化し,人口増加に転ずる地域もあらわれていたが,1980年代後半から地方圏における人口減少が再び顕著になってきた。そして,1990年センサス結果により,多くの地方農村圏の過疎地域において,人口減少が加速化している状況が明らかになった。これらの地方農村圏からの大量の人口・労働力移動は,かつての1960年代の高度成長期における大都市圏への労働力吸引と様相を異にする。地方圏の側では一定の就業機会が存在し,むしろ労働力不足の状況にある。しかし,地方圏からの人口流出はつづいている。過疎地域においては,地域の労働力再生産機能を喪失し,死亡数が出生数を上回る自然減社会に突入するというきわめて厳しい状況にいたり,地域崩壊の危機に瀕している地域も存在する。
 本稿は,このような過疎地域における新たな人口流出の動向について,統計的に実態を把握するとともに.統計的接近では把握が不可能な社会的要因や意識などの要因に関して実態調査,事例研究により詳細な実態把握を試みようとするものである。
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