近年金管楽器の演奏技術は目覚ましい発展を遂げてきている。その要因には、より合理的な演奏法に関する研究が進み、多くの教則本や著書等が普及された点や、インターネットなどを通して著名な演奏家の演奏等に触れる機会が増えた点などが挙げられる。しかし教則本等の方法論が確立しつつある中で、実際に演奏する場合、音に対するイメージを深く考えずに練習が行われ、音色や音楽表現の個性、色という面において、あまり差や違いが感じられない演奏が増えてきたようにも感じられる。
一方、気持ちやイメージだけで吹き続けていては、技術との歯車がかみ合わなくなったときに、本番で非常に残念な結果に終わってしまう場合がある。また、身体や筋肉組織に過剰な負担をかけ、演奏寿命を縮めてしまう恐れがある。そのような場合、一度理論を見直す必要があるであろう。本稿では、Branimir Slokarの教則本である(1979)『Warm-ups+Technical Routines』Edition Bimの中から、その著者が重要視しているエクササイズを取り上げ、演奏の基本とエクササイズの目的について考えていく。