本研究は、個別の指導計画に、学習主体である知的障害児自身の目標意識を反映させるための手続き・方法の開発を試みるものである。個別の指導計画において、教師・保護者連携で設定された目標に対する知的障害児自身の重みづけ等が評価可能な方法を開発し、その方法の有効性や実行可能性等を検討することが主目的である。やや広範で抽象的な表現をもつ個々の子どもの優先的指導目標を、それに関連する実際的・具体的エピソードとしてイラスト画化して提示し、各目標画について子どもに目標として自分にとっての重み付けを行わせる手続きを試作した。知的障害特別支援学級に在籍する中学校三年生と小学校六年生各一名を対象に実施した。その結果、数種比較手続きの結果から、対象児が一貫した重み付けをしていたことが示された。また、教師や保護者によって日常的に意識づけられていた目標を優先的に選択する一方で、自己の苦手な難課題や、こだわり等自己特性に関わる課題を、教師等の期待に反し優先的目標として選択・重み付けないなどの傾向がみられた。知的障害児に目標を絵化して提示する方法の有効性や諸課題、さらには重みづけ手続きの個別の指導計画過程への位置づけなどについて考察した。