武者言葉を書きとどめた「武者言葉集」についての調査・検討は、先学により、かなり進められてきたが、その言語学的分析は、未だ十分に行われていない。本稿では、日本語助数詞の歴史的研究の一環として、主に近世の「武者言葉」における助数詞語彙を整理し、検討した。
武者言葉の特徴の一つとして、その忌み言葉的性格がよく知られている。この点につき、「
(イ)従来、何のこだわりもなく使用している言葉ではあったが、(ロ)戦乱の打ち続く内、その語音や表記が忌まわしく、不吉に感じられるようになってきたので、これを敵方へ押しつけ、味方には別の言葉(語形・表記)を採用する」というパターンが認められた。武者言葉としては、この後半部(ロ)の忌み言葉的性格や相対的性格に注意される。だが、前半部(イ)から後半部(ロ)へという流れも重要視しなければならない。ここには、武者言葉の成因や年代性を考えるカギが潜んでいるからである。