本稿は、日本政府主催のJET プログラムで全国の小中高校に派遣されている外国語指導助手(ALT:Assistant Language Teacher)と、彼らと日々接している日本人教員との異文化適応もしくは二者の間に存在する異文化的要因に関して、二者が、どのような相違を感じ、どのようなことに困惑し、また問題になっているのかを、文化的・社会的・教育的また個人的な要因を含め幅広く調査し考察を加えた。
教育の場でも様々な異文化接触・異文化適応が論じられおり、留学生、外国人児童生徒、および海外子女・帰国子女に関する研究や調査が活発に進められている。しかしながら、前記の二者間の異文化接触に関しては極めて調査研究が少ない。「日本の教育現場における異文化接触」という観点から見ると、ALT は、外国人児童や海外帰国子女、留学生と比較し、①児童生徒としてではなく、成人として日本の初等中等教育現場を経験する ②勉学を目的とするのではなく、日本人教員と共に教壇に立ち「仕事」をすることが大前提で来日している、という点で大きく異なる。
本稿では、日本人教員とALT が感じる異文化的要因を論じると共に、ALT が戸惑いを感じる点を考察することによって、日本人教員が気づきにくい日本の学校現場における異文化的な側面を捉え直し、さらに教育・社会・行政等の観点も含め、双方が円滑に仕事を進めていく上で影響している要因を、マクロとミクロの視点から考察を加える。また調査で多くの要因が明らかになったが、個々の要因について詳細に述べることは別の機会に預け、本稿では重要と思われた要因、特に、ALT の出身国と異なる学校文化、ALT と日本人教員とのコミュニケーションの問題に焦点を当てたい。