中学校国語科定番教材である「走れメロス」についてこれまでの実践では実現されにくかった総合的に語句・語彙に着目する指導を提案する。語彙分析により「走れメロス」は他の定番教材に比べ語彙構成が特徴的であるという教材特性が明らかになった。その教材特性を手がかりに場面分けや着目する語彙を決定し,語句の置き換えを複数施した「資料版・走れメロス」を作成した。それと教科書本文とを比較して読む実験群と,従来の手引き通りの指導を施す対照群を設け授業を行った結果,実験群の生徒は読みの能力の個人差に関係なく二次感想文の量が増加し,視点が広がることや,登場人物に対する印象が変化することが明らかになった。以上の結果から文学作品を扱う際は教材特性を明らかにし,それを生かす展開を設定するべきであること,また,授業者が読み方を細かく焦点化せずとも,総合的に語句に着目させイメージを膨らませる機会を設定すると,生徒は具体的で柔軟な読み方ができることが示唆された。