近年,地方都市では大資本を背景とした大規模小売店舗の進出がめざましく,低廉な商品や豊富な品揃を目玉に全国各地において地元商店街との摩擦が生じている。
すでに大都市圏およびその周辺都市の一部では,購買指示人口比率を越えた大型店の過剰集積から,非大都市圏ないし中小地方都市への新たな市場開拓を余儀なくされている。つまり大都市から中都市へ,中都市から小都市へといった,都市階層構造の上位都市から下位都市へ向かう大型店の地域的展開がすすんでおり,最近の松江市における大型店の増加も,そうした全国的な動向の一部とみなし得るように思われる。
大型店に対抗して,地元商店街でも既存商店街の整備や経営の合理化,あるいは共同出資による店舗の大型化などさまざまな対応が計画されて,すでに松江市においてもその一部が実行に移されている。“松江の顔”として成立してきた末次,白潟・天神などの商店街でもその例外ではなく,大型店の急増以後の顧客の減少をいかに取り戻すかが最大の課題となっている。
大型店進出による地方都市の小売商店街が荒廃しつつあることは全国的な傾向であると言われることからしても,最近の松江における商店街の変容を単なる一商店街の問題として把えるのではなく,市域全体の小売商業の再編成期として認識する必要があると思われる。
本稿は,松江市における大型店の成立過程を全国的なレベルから比較し,その特色を明らかにするとともに,既存商店街と大型店の関連も分析しながら,小売業の再編成期たる松江市の商店街のあり方についても考えてみたいと思う。